インドの寺院の地下から「3兆円」の財宝が出現、しかし「最後の扉」だけは開けてはならない —— パドマナーバスワーミ寺院『開かずの間』の呪いと真実

【概要:現代世界に残された最後の「封印」】

場所: インド南部、ケーララ州ティルヴァナンタプラム。

対象: スリー・パドマナーバスワーミ寺院(Sree Padmanabhaswamy Temple)。

事件: 2011年、インド最高裁判所の命令により、数百年閉ざされていた寺院の地下倉庫(Vault)が開封された。

発見: 「A号室」を含む5つの部屋から、推定**220億ドル(当時のレートで約1兆7000億円〜3兆円規模)にも及ぶ、人類史上最大級の金銀財宝が発見された。

謎の核心:

しかし、地下にはもう一つ、「B号室(Vault B)」と呼ばれる部屋が存在する。

この部屋の鉄の扉には、鍵穴もボルトも存在しない。代わりに、扉の表面には「2匹の巨大なコブラ」**のレリーフが彫り込まれ、警告を発している。

「この扉を開ければ、インド全土、いや世界に破滅的な災いが降りかかるだろう」

開けようとした請願者の急死、占星術による戦慄の予言、そして最高裁と王家の対立。

これは、現代の法と科学が、古代の「呪い」と「信仰」という見えない壁に激突している、現在進行形のミステリーの全記録である。


第1章:黄金の国、トラヴァンコールの遺産

1-1. ヴィシュヌ神の「終の棲家」

インドの南端、アラビア海に面したケーララ州の州都ティルヴァナンタプラム。その都市名は「聖なる蛇アナンタの都」を意味する。

その中心に鎮座するのが、パドマナーバスワーミ寺院だ。

16世紀に現在の姿(ドラヴィダ様式とケーララ様式の融合)に改築されたこの巨大な寺院は、かつてこの地を支配したトラヴァンコール藩王国の王家の守護神である。

本尊は、巨大な多頭の蛇「アナンタ」の上に横たわるヴィシュヌ神(パドマナーバ)の像。

この像自体も特異だ。1万2000個の「サラグラム」と呼ばれる聖なる黒いアンモナイト石で作られており、神秘的な力を宿すと信じられている。

歴代のトラヴァンコール王たちは、自らを「パドマナーバの奴隷(Padmanabha Dasa)」と名乗り、国家の全財産は神のものであるとして、富を寺院に奉納し続けてきた。その蓄積が、数百年の時を経て、想像を絶する事態を引き起こすことになる。

1-2. 2011年、パンドラの箱が開く

事の発端は、一人の男の勇気、あるいは無謀な行動だった。

元IPS(インド警察職)の将校であり、弁護士のT.P.スンダララジャン(T.P. Sundararajan)。

彼は、当時寺院を管理していた王家の末裔による管理体制に不備があり、貴重な宝石が盗まれているのではないかと疑念を抱いた。

「神の財産は、公的に管理されるべきだ」

彼は裁判所に公益訴訟(PIL)を起こした。王家側は猛反発したが、インド最高裁判所はスンダララジャンの訴えを認め、寺院の地下にあるとされる「秘密の倉庫(Vault)」の棚卸しと、資産の目録作成を命じた。

裁判所は7人の調査委員会を任命し、消防隊、考古学者、宝石鑑定士からなるチームが結成された。彼らは金属探知機と酸素マスクを装備し、寺院の地下へと足を踏み入れた。

地下には、A、B、C、D、E、Fと名付けられた6つの部屋(チャンバー)があった(後にGとHも確認)。

C〜Fは祭具などを保管するために定期的に開けられていたが、**AとBは、少なくとも130年以上(伝説によれば数百年)、誰の目にも触れていない「開かずの間」**だった。


第2章:Vault Aの衝撃 —— 人類史上最大の「埋蔵金」発見

2-1. 鉄の扉の向こう側

2011年6月27日、調査チームはまず「C〜F」の部屋を確認した後、ついに「Vault A(A号室)」の封印を解く作業に着手した。

花崗岩の床板を外し、鉄格子の扉を焼き切り、重い木の扉をこじ開けた先。

懐中電灯の光が暗闇を切り裂いた瞬間、調査員たちは息を呑み、その場に立ち尽くした。

そこは、文字通りの**「黄金郷(エル・ドラード)」**だった。

床一面、壁際、天井近くまで、金、銀、ダイヤモンド、ルビー、エメラルドが、まるでゴミのように無造作に積み上げられていたのだ。埃を被った袋を持ち上げると、底が破れ、中から金貨が滝のように溢れ出した。

2-2. 発見された「神の財宝」リスト

後に一部リークされた目録によると、Vault Aから発見された主な物品は以下の通りである。これらは博物館の展示品レベルではなく、王国の国家予算そのものが物理的に凝縮された量だった。

  • 黄金の神像: 高さ約1.2メートル、純金製のヴィシュヌ神像(ダイヤモンドとエメラルドが埋め込まれている)。
  • 黄金のゆりかご: 重さ500kg以上の純金製のゆりかご。
  • ダイヤモンドのネックレス: 全長約5.5メートル(18フィート)にも及ぶ、数千個のダイヤモンドとエメラルドで装飾された巨大な首飾り。神像に掛けるためのもの。
  • 金のココナッツ: 純金で作られたココナッツの実が数千個。
  • 金貨の山: 重さ数百キログラムに及ぶ金貨の袋。その中には、ナポレオン時代のフランス金貨、ローマ帝国の金貨、東インド会社の金貨などが含まれており、歴史的価値は計り知れない。
  • 宝石の袋: 加工されていないダイヤモンド、ルビー、サファイアが、米袋のような袋に詰め込まれていた。

推定総額:

貴金属の「地金(重さ)」としての価値だけでも数十億ドル。骨董的・歴史的価値を加味すると、推定額は220億ドル(当時のレートで約1.7兆円、現在の価値で3兆円以上)を超えると試算された。

これは、ムガル帝国の財宝や、ツタンカーメンの黄金、タイタニック号の積荷などを遥かに凌駕する、「記録に残る単一の場所からの発見」としては人類史上最大のものである。

世界中がこのニュースに沸いた。「インドの寺院に、国家予算並みの隠し財産があった!」

しかし、調査チームの歓喜は、最後の扉の前で凍りつくことになる。

それが、**「Vault B(B号室)」**だった。


第3章:Vault B —— 蛇に守られた「禁忌」

3-1. 物理的な異常

Vault Aの調査を終えたチームは、その隣にある「Vault B」の前に立った。

しかし、この扉は明らかに他の部屋とは異なっていた。

  • 鍵穴がない: 他の扉には南京錠やボルトを通す穴があったが、B号室の扉は分厚い鉄の一枚板で、鍵穴もラッチもヒンジも見当たらなかった。どうやって開けるのか、物理的に不明だった。
  • 蛇の紋章: 扉の表面には、守護神である**「2匹の巨大なコブラ」**のレリーフが浮き彫りにされていた。威嚇するように鎌首をもたげたその姿は、明確な「警告」を意味していた。

3-2. 「ナーガ・バンダム」の伝説

寺院の聖職者たち、そしてトラヴァンコール王家の当主マルタンダ・ヴァルマ(Uthradom Thirunal Marthanda Varma)は、調査チームと最高裁に対し、必死の懇願を行った。

「B号室だけは、絶対に開けてはならない」

彼らが語った理由は、物理的な構造の問題ではなく、霊的な「封印」だった。

この扉は、16世紀に高位の聖者たちによって**「ナーガ・バンダム(Naga Bandham:蛇の縛り)」**という強力なマントラ(呪文)で封印されたという。

この封印を解くことができるのは、「ガルーダ・マントラ」を完璧に詠唱できる高僧(サドゥ)のみ。しかし、そのような知識を持つ聖者は現代にはもう存在しない。

「もし、力ずくでこの扉を開ければ、寺院だけでなく、インド全土、あるいは世界中に『大災害』が解き放たれるだろう。海が荒れ、疫病が流行り、人々は死に絶える」

3-3. 1930年の恐怖体験

地元には、一つの不気味な逸話が残っている。

1900年代初頭、あるいは1930年代に、一度だけ盗賊(あるいは英国の探検家という説もあり)がこのB号室を開けようと試みたことがあった。

彼らが扉に手をかけた瞬間、どこからともなく無数のコブラが出現し、彼らに襲いかかったという。逃げ惑う彼らの悲鳴を聞いて以来、誰もこの扉には近づかなくなった——。

調査チームは躊躇した。

目の前には、A号室を上回るかもしれない財宝が眠っている可能性がある。しかし、扉の異様な雰囲気と、王家の必死の抵抗、そして聖職者たちの「世界が終わる」という警告。

現場は、科学的調査と宗教的タブーの板挟みとなり、膠着状態に陥った。


第4章:最初の犠牲者 —— 告発者の死

このミステリーを決定的に「呪いの物語」へと変えたのは、一つの死だった。

2011年7月、地下室の開封からわずか数週間後のことである。

この一連の調査の発端となり、執拗に「開門」を訴え続けてきた請願者、T.P.スンダララジャンが、突如として高熱に倒れ、急死したのである。享年70歳。

彼はそれまで健康そのものだった。

死因は不明確だったが、地元の人々は震え上がった。

「見ろ、神の怒りだ。封印を暴こうとした者が、真っ先に裁かれたのだ」

スンダララジャンの死は、最高裁の裁判官や調査チームの心理に暗い影を落とした。

「次は誰だ? 扉を開けた我々か?」

メディアは「パドマナーバスワーミの呪い」と書き立て、世論は一気に「開封反対」へと傾いていった。


第5章:占星術の審判 —— 「デヴァプラスナム」の警告

科学的な調査が行き詰まる中、寺院側は伝統的な手法で神の意志を確認することを決定した。

それが**「デヴァプラスナム(Devaprasnam)」**と呼ばれる、ケーララ州特有の極めて複雑で厳格な占星術の儀式である。

2011年8月、著名な占星術師たちが集められ、4日間にわたる儀式が行われた。

彼らがカウリ貝や星の配置を使って導き出した「神託」は、戦慄すべきものだった。

【デヴァプラスナムの結果】

  1. 神の激怒: 地下室(特にA号室)が開けられ、神聖な財宝が汚されたことに対し、主神パドマナーバは激しく怒っている。
  2. B号室の正体: Vault Bは、ただの宝物庫ではない。その地下深くは海(アラビア海)と繋がっており、神聖な蛇たちが守る**「聖域中の聖域」**である。
  3. 開封の代償: もしB号室を無理やり開ければ、王家の主(当主)の死、あるいは国家規模の天変地異が起こるだろう。
  4. 不吉な兆候: 儀式の最中、汚れた服を着た子供が入り込んだり、猫が井戸に落ちたりするなど、不吉な予兆が次々と確認された。

占星術師は宣言した。

「B号室を開けることは禁忌である。いかなる技術を用いても、神の許しなしに開門してはならない」

最高裁判所は、この結果を無視できなかった。インドという国において、宗教的感情と伝統は法と同じくらい、あるいはそれ以上に重い意味を持つからだ。

こうして、B号室の扉は再び闇の中に閉ざされることとなった。

しかし、物語はここで終わらない。

この「呪い」の裏側で、もっと現代的で、もっと生々しい「疑惑」が持ち上がっていたからだ。

それは、元インド会計検査院長(CAG)ヴィノド・ライ(Vinod Rai)による、衝撃的な報告書だった。

(第一部 完・第二部へ続く)


【第一部 参考文献・出典】

  • Supreme Court of India. Writ Petition (Civil) No. 428 of 2011: T.P. Sundararajan Vs. State of Kerala & Ors. (インド最高裁判所による公式記録および命令書)
  • Rai, Vinod (2014). Report of the Amicus Curiae submitted to the Supreme Court of India. (元会計検査院長による監査報告書)
  • Forbes. Article: “The Secret of the Trillion Dollar Treasure of India’s Padmanabhaswamy Temple” (2015).
  • BBC News. Article: “India: Treasure of Padmanabhaswamy temple to remain locked” (2011).
  • The Hindu. Reports on the Devaprasnam proceedings and the death of T.P. Sundararajan (July 2011).

インドの寺院の地下から「3兆円」の財宝が出現、しかし「最後の扉」だけは開けてはならない —— パドマナーバスワーミ寺院『開かずの間』の呪いと真実【完全保存版・第二部】

第6章:暴かれた「呪い」の裏側 —— ヴィノド・ライ報告書の衝撃

物語はここで、オカルト的な「呪い」の話から、一転して生々しい「人間ドラマ」と「疑惑」へと急展開する。

2012年、最高裁判所は、寺院の管理状況を監査するために、インドの元会計検査院長(CAG)である**ヴィノド・ライ(Vinod Rai)**を任命した。

彼が作成し、最高裁に提出した監査報告書の内容は、聖職者たちの主張を根底から覆す爆弾だった。

6-1. 「B号室は開けられていた」

報告書の中で、ライ氏は驚くべき事実を指摘した。

「寺院の記録によれば、Vault B(B号室)は、1990年から2002年の間に、少なくとも7回は開けられている」

聖職者や王家は「数百年間、開ければ世界が滅ぶ」と主張していたはずだ。しかし、公式の台帳には、銀のインゴットを取り出したり、清掃を行ったりするために、関係者がB号室に入室した記録が残っていたのだ。

では、なぜ彼らは死んでいないのか? なぜ世界は滅んでいないのか?

ここには、「B号室の構造」に関するトリックがあると言われている。

B号室は、二重、あるいは三重の構造になっている。

  1. 第一の扉(鉄格子): ここは開けられた記録がある。
  2. 第二の扉(木製): ここも開けられた可能性がある。
  3. 第三の扉(鉄製): これこそが、コブラのレリーフが刻まれた「最後の扉」である。

ライ氏の報告書は、「これまでの入室は『前室』までであり、最後の聖域には触れていない」とする王家側の反論と、「いや、実は中身はすでに持ち出されているのではないか」とする懐疑派の意見で真っ向から対立することになった。

6-2. 消えた黄金と「金メッキ機械」

さらにライ報告書は、寺院の管理体制における「背筋が凍るような不正」の可能性を示唆している。

  • 消えた金: 過去の台帳と現物を照らし合わせた結果、数百キログラム単位の金が所在不明になっている。
  • 金メッキ機械の発見: 最も衝撃的だったのは、寺院の敷地内から**「金メッキを施すための機械」「切断機」**が発見されたことだ。

これは何を意味するのか?

疑惑のシナリオはこうだ。

「何者かが、秘密裏に地下室から純金の像や装飾品を持ち出し、この機械を使って安物の金属に金メッキを施した『レプリカ』とすり替え、本物を外部へ横流ししていたのではないか?」

もしこれが事実なら、「開けてはならない」という必死の抵抗は、呪いを恐れてのことではなく、「中身が空っぽであること(=横領の事実)」がバレるのを防ぐための隠蔽工作だったことになる。

「呪い」か「陰謀」か。ミステリーは複雑さを増した。


第7章:Vault Bには何が眠っているのか? —— 4つの仮説

現在もなお、最後の「鉄の扉」は閉ざされたままである。

その向こう側に何があるのか? 専門家や歴史家たちの間では、いくつかの有力な仮説が囁かれている。

仮説1:Vault Aを凌駕する「100兆円」の財宝

最も現実的かつ夢のある説だ。

Vault A(A号室)からは約3兆円の財宝が出た。しかし、歴史的文献によると、B号室こそがトラヴァンコール王家の「本金庫」であり、A号室は予備に過ぎないという記述がある。

もしそうなら、B号室には、かつての南インドの全財産、現在価値にして**1兆ドル(約100兆円〜150兆円)**規模の、想像を絶する金塊や宝石が眠っている可能性がある。

特に、「ヴィシュヌ神の聖なる偶像」そのものが安置されているとも言われており、その宗教的価値はプライスレスだ。

仮説2:古代の防御システム「海への直結」

オカルトめいているが、根強く信じられている説。

「B号室の床は、地下水路を通じてアラビア海と直結している」

もし扉を無理やり破壊すれば、水圧のバランスが崩れ、海水が鉄砲水のように寺院内に逆流し、ティルヴァナンタプラムの街全体を水没させるというものだ。

これが「ナーガ(蛇=水神)」の怒りの正体であり、古代のエンジニアが仕掛けた、侵入者を道連れにする自爆装置(ブービートラップ)であるという解釈だ。

仮説3:異界への扉、あるいは古代テクノロジー

インドの古代叙事詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』には、現代の核兵器や航空機(ヴィマナ)を思わせる記述がある。

一部の研究者は、B号室には財宝ではなく、**「古代の叡智」や「未知のテクノロジー」**を記した金属板、あるいは「ヴィマナ」の一部が封印されているのではないかと推測している。

「ナーガ・バンダム(蛇の縛り)」とは、特定の音波(マントラ)によってのみ解除される、生体認証あるいは音響ロックシステムのことではないか、というSF的な考察さえ存在する。

仮説4:空虚な闇

ヴィノド・ライ報告書が示唆するように、中はすでにもぬけの殻であり、あるのは埃と、過去の略奪の痕跡だけという説。

もしこれが真実なら、扉が開いた瞬間に崩壊するのは「世界」ではなく、トラヴァンコール王家の「名誉」と、信者たちの「信仰心」である。


第8章:現在の状況 —— 膠着する2つの正義

8-1. 最高裁判所のジレンマ

2024年現在に至るまで、インド最高裁判所は「Vault Bの開封」に対する最終的なゴーサインを出していない。

2011年の発見以降、寺院はケーララ州警察の武装コマンド部隊によって24時間体制で厳重に警備されている。監視カメラが設置され、金属探知機ゲートが置かれ、かつての静寂な祈りの場は、要塞のような緊張感に包まれている。

最高裁は揺れている。

法治国家として、不正の疑いがある以上、資産を明確にすべきだという「透明性(Transparency)」の理屈。

一方で、何億人ものヒンドゥー教徒が信じる「聖域の不可侵」という「信仰(Faith)」の理屈。

そして、実際に人が死んだ(スンダララジャン氏の死)という「恐怖」。

8-2. 永遠の封印

2020年、最高裁は寺院の管理権を王家の末裔に認める判決を下した(ただし監査委員会は残る)。これは実質的に「王家の意向を尊重する」という流れであり、B号室の開封は当面の間、凍結されたことを意味する。


結び:パンドラの箱は、閉じたままでいい

現代社会において、Google Earthで地球の裏側が見え、AIが論文を書くこの時代に、物理的に目の前にある「たった一枚の鉄の扉」が開けられない。

この事実は、私たちに強烈な畏敬の念を抱かせる。

パドマナーバスワーミ寺院のVault B。

そこにあるのが、世界経済を揺るがすほどの黄金なのか、古代の水没トラップなのか、あるいはただの空虚な闇なのか。

真実は、コブラのレリーフの向こう側で、今も静かに眠っている。

もしかすると、スンダララジャン氏が命と引き換えに開けたA号室は、神が人類に与えた「手切れ金」だったのかもしれない。

「これを持って行け。だが、これ以上奥(B号室)には入るな」と。

我々は、知るべきではないことがある。

この扉は、人間の強欲に対する最後の防波堤として、永遠に閉ざされているべきなのかもしれない。

(完)


【第二部 参考文献・出典】

  • Supreme Court of India. Civil Appeal No. 2732 of 2020: Sri Marthanda Varma (D) Thr. LRs. & Anr. vs. State of Kerala & Ors. (2020年の最高裁判決文)
  • Rai, Vinod (2014). Report of the Amicus Curiae submitted to the Supreme Court of India. (ヴィノド・ライ監査報告書)
  • Subramanium, Gopal (2014). Report of the Amicus Curiae. (B号室の開封履歴や金メッキ機械の発見に関する記述)
  • The New Yorker. Article: “The Secret of the Temple” by Jake Halpern (2012).
  • India Today. Investigation: “Padmanabhaswamy Temple treasure: What lies in Vault B?”
  • Khanna, D. (2019). The Mystery of Padmanabhaswamy Temple. (学術的・宗教的観点からの分析書)

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